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新海誠監督『言の葉の庭』

映画『言の葉の庭』は、15歳の少年と27歳の女性という、若い男女の微妙な関係を描いたショートムービー。

靴作りが好きで靴職人を目指しているが、将来の見通しが立たず、漂流し孤独を感じている男子高校生・孝雄。大人の世界に自分の居場所がなく、漂流していると感じている美人教師・雪野先生。この二人が突然出会うところからストーリーが始まります。

46分間の短編映画『言の葉の庭』を単純なラブストーリーとみなす人もいますが、それは大きな間違いです。この二人の男女の年齢差による「禁断の愛」作品だと言われることが非常に多いのですが、こうした色眼鏡のせいで、同作品に対する誤った批判が繰り広げられています。

一見すると、『言の葉の庭』には、素人には分からない微妙なニュアンスがありますが、映像の使い方や会話の細かい内容を注意深く読み解いていくと、作品の本当の価値が実感できるでしょう。

実際、新海誠監督は「孤独」や「メランコリー」をテーマにした物語を作りたかった、とコメントしており、作中で恋愛表現は目立つものの、典型的なラブストーリーのような描写や展開はありません。

物語は、10代の少年と謎めいた大人の女性という主要登場人物2人のやりとりを中心に展開していきます。この二人の主人公の成長や内心がほんの一瞬のやり取りで表現されているため、セリフはまばらですが非常に意味が深いです。

さらに、会話が少ないことで、口に出すよりもかえって、感情が雄弁かつ情熱的に伝わるシーンが多いのですが、その際に映像が大きな役割を果たしてます。

短編映画は、時間が短いからこそ、すべての要素がストーリーにとって意味あるものにしなければなりません。基本的な動き、風景、音楽、会話など、理由もなく使われている要素はありません。

その点を踏まえると、同作品においては、深い感情とその裏にある意図を簡潔かつ巧みに伝えており、まさに見事な構成といえます。ひとつの物語を紡ぐ上で、無駄なものは何一つない作品に仕上がっているので、是非皆さんも一度は観てみることをおすすめします!